愛 燃える

ー呉王夫差ー



     2001年  10月  9日
               

まず、読む前に前置きとして、内容のネタばれと、あくまでも私の主観による感想であることを、
お許し頂ける方に、読んで頂きたいです。
いやね、自分が内容判ってから、観劇するのは、苦手なので一応断って、書こうかなと…(^^ゞ

では、順に人物を追って書いていきたいと思います。



呉王夫差(轟 悠さん)

全体の印象としては、人間臭かった。王としての彼より王としての苛立ちみたいなものが、
前面に出てた気がします。
戦に追われて、己の感情も何処かに置いてきてしまった。その事の淋しさに、西施が気づかせてくれると、
言うか二人の中のむなしさと、淋しさが最初に引かれ合う切っ掛けじゃないのかな…!?
夫差は、西施が間者だって判ってた、でも王であることにすら疲れていた彼に、彼女の淋しげな優しさは、
染みこんでいったんでしょうね。
そして、彼女の喜ぶ顔を見るのが好きだった。だからそれを妨げるもの、彼女を自分から奪うものが、
許せなかった、彼にとって真実はどうでも良くなっていたのかもしれません。
西施と共に居る事のやすらぎのひととき。そのために総てを滅ぼしても、悔いは無かったのかも…。



西 施(月影 瞳さん)

とにかく美しく、そしてやっぱり淋しさの影がつきまといます。
彼女は好きな男の頼みだから、心を殺して呉に来ます。
そして、恐ろしい男だろうと思っていた、夫差に自分と同じ淋しさを見いだしたのでしょう。
夫差の優しさに惹かれながら、それでも憎くて恋しい男を忘れられないで居る。
捨てられたのだと、思いながらも、会いに来た范蠡に抱かれると、心が揺らぐのです。
もう、引き裂かれてるのが、判るのですよね、壮絶に二人を愛してしまっている。
しかし、国の為という、憎い男の言葉に従ってしまう悲しさが、なかなか良かったです。
最後に、迎えに来た、范蠡がやはり己のために利用していたと判ったとき、
彼女は、きっぱりと初恋の幻影とさよならします。
自分が共に行くのは、夫差であると心を決める。
彼女の死に様は、やはり美しいです。



范 蠡(絵麻緒 ゆうさん)

とにかく、いい男です。知略家 計略家と言われるとおり、己の計算通りに人々を動かしていきます。
彼は、西施のことは、本当のところどう思っていたのでしょう。
意見の別れる所でしょうが、やっぱり好きだったのは事実だと思います。
自分が惚れた女で、自分に惚れてる女だから、呉を滅ぼすために、夫差を恋に狂わす為に適任だと、
そう考えたのでは、無いのでしょうか、迎えに行くことが、彼の想いの証だと何処かで信じて…。
でも、女には彼の想いは、男のエゴでしかなかった、彼も自分の元に戻る意志がないなら、
あえて連れ帰ることに、執着しなかった。
かつては、好き合った仲でも西施が、暮らした呉の生活の間だにすれ違ってしまったのかな…!?



伍 封(朝海 ひかるさん)

彼は、何よりも呉の国の事を考えていた。そのために夫差が何をするべきで、
何をしてはいけないのだと、日夜呉の国のために、その忠義と更に愛国の志が、彼を追いつめていきます。
夫差の淋しさや、戦のむなしさを理解することが出来ていれば、国のためには人の心を、
思いやることが出来れば、悲劇は食い止めることが出来たのかもしれません。
夫差と共に戦に明け暮れる日々のなかで、彼は近くにいながら気づくことはありませんでした。
彼の最後も、夫差を案じるのでなく、呉の国の行く末を心配しながら果てます。
その死に様は、確かに潔いのですが、先が見えていただけに、悲しいものでしょね。



王 孫惟(貴城 けいさん)

呉の将軍で有りながら、西施の美貌に狂った男…。
彼もまた、どうすることも出来ない想いに捕らわれたのでしょうね。
人が人に惹かれる。それは説明できることではなくて、彼女が手にはいると、己のものに出来ると、
思った瞬間に、総てを捨ててしまっていた。そう、命すら捨てる覚悟は出来ていたはず。
しかし、夫差に咎められたとき、彼は恐れ震えてひれ伏します。
彼にとって、やはり王 夫差は絶対の存在であり、総てを意のままにする恐怖でもあったのでしょうか。
その死は、あっけなく、夫差の嫉妬の炎の中に燃え尽きます。
武人の誇りも、許されることなく…。
婉華と共に宴で踊る彼の西施を求める。目が行動が忘れられません。



伯 ヒ(星原 美沙緒さん)

その柔らかい物腰の中に、己の私欲を包み隠して、夫差を呉を裏切る男。
しかし、彼は夫差の淋しさが見えていたからこそ、范蠡の計略に乗ったとも言えるのでは無いでしょうか。
戦乱の中で、生き残るために、利用できるものは総て利用して生きています。
そのために、邪魔な伍封を陥れることも、いや彼等兄弟の忠義すらも、彼にとっては、利用価値のあるもの
でした。
弁舌が立ち、言葉巧みに夫差の心を操っていきます。しかし彼も范蠡の道具にすぎませんでした。
保身を優先する者を、信じることのなかった、范蠡の手にかかって命を落とします。
裏切り者は、裏切られるそんな運命だったのでしょうか。



孫 武(立樹 遙さん)劉 生(壮 一帆さん)

夫差の侍従の役割なのでしょうか、付き従っては居るのですが、彼等の生き様が見えてきませんでした。
台詞で説明されて、存在が判る範囲で、家臣の一番近い存在としては、弱かった気がします。
もう少し、書き方があった気がます。



張 良(未来 優希さん)

伯ヒの腹心と言うのでしょうか、いつの間にかそこにいて、やはり笑って居るのに、
何処か恐ろしさを感じさせてくれます。
機会が有りさえすれば、伯ヒに取って代わる。そんな心の奥底さえ見え隠れしているように思います。
伍友を責めていたのも、きっと彼なんだろうなと…。



婉 華(紺野 まひるさん)

美しい、舞姫です。そして恩義に報いようと、西施に刃を向けます。
彼女にとっては、自分の踊りを愛してくれた、西施よりも、
命を救った伍封の方が大切だったのでしょうね。
しかし、西施を殺めることも叶わずに、王 孫惟に捕らえられます。
地下牢に連れて行かれた彼女が、この後どうなったか、語られることが無いのが残念です。
(やはり、伯ヒ達に責められ、責め殺されたと考えるのが、妥当なのでしょうか。)




陳 林(美郷 真也さん)張 九(風早 優さん)

呉の兵士の代表の様な方々です。
戦乱の中の、現実の中に生きているというか、真に生きることはどういうことかを、見せてくれます。
そして、この重いお話しの清涼剤としての役割をしっかりと果たされます。
唯 どうしても出番が、少なく終幕近くでしか、見せ場が無かったのが残念です。




伍 友(音月 桂)

兄を信じて、斉の国へと和議の使者にたちます。
そして、斉の国で捕らえられるのです。(道案内用の地図を利用されて…。)
伯ヒにとっては、絶好の生け贄とでも言うのでしょうか、西施が盗み出した、地図の濡れ衣を着せるのに、
これ程の適任者は居なかったはず。
捕らえられた、彼はきっと長く死なない程度に、責められ続けたのでしょうね。
そして、頃合いと見た、伯ヒ達に引き出され、兄との再会を果たしたときに、総てから解き放たれる。
唯 国のためと、夫差に訴えながら、兄に抱かれて言切れます。
うん、綺麗ですよ、この死に様は、兄上を追いつめる切っ掛けに利用されているのにね。
唯 この時代の拷問の有り様を想像すると、かなり現実は壮絶な姿になっていたんだろうなと、思います。
(本当に、かろうじて生かせておけば、伯ヒ達には利用できるのですから。)


と、ざっと書いてみましたが、作品が固くて重いせいもあってか、
人物の分析みたいな感想になってしまいました。
マァ、こんなパターンもありって事で、お許しください。
主立った方は書いたつもりですが、書き落としていたら済みません。


                                          Megu